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参加記   兵庫 林 祐介

 3月8日から3月12日、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)世界大会に参加した。香港で飛行機のエンジントラブルのため丸1日足止めをくらい、デリーに入った。

 全国反核医師の会から総勢22人が参加。団長は反核医師の会代表世話人の児嶋徹先生(東京)、副団長に中川武夫先生(愛知)、武田勝文先生(大阪)。医学生は福井大学、金沢医科大学、長崎大学医学部からいずれも1人が参加した。若い先生や医学生の参加が、団の雰囲気を若返らせた。会場に着くと、昨年京都で行われた反核医師・医学者のつどいで講演いただいたティルマン・ラフ先生に出会う。

 全体会議では「グローバル化、軍拡、核保有」をテーマに報告と対話が行われた。新自由主義によって金融市場の抑制ができず、億万長者が急激に増える一方で、驚くべき規模で貧困が広がっている。ひとにぎりの大金持ちや資本家が「労働コストと税金」を苦々しく思う一方で、1日1ドル以下の生活を強いられている人々が何億人もいる。この格差が紛争を生み出している。由々しき事態だ。

 分科会では、インドのウラン採掘場で起こっている環境汚染の実態の報告に参加した。Jadugoda鉱山では、生まれてくる子どもに高頻度で奇形児がみられる。この村の母親は出産時、子どもが正常に成長することができないのではないかと不安で嘆き悲しむそうだ。このウラン採掘場での出来事は映画「ブッダの嘆き」を観るとよく理解できる。

 戦争時の女性と子どもの問題をテーマにした講演にも参加した。戦争の最大の被害者はいつの時代でも女性だ。会場では「多額の軍事費を社会保障に」と訴えた女性に拍手がおこった。

 別の分科会では、劣化ウラン弾に関する報告を聞く。報告者は日本の振津かつみさん。彼女は長年チェルノブイリの原発事故後のベラルーシ住民との交流や劣化ウラン弾反対にも取り組み、ドイツIPPNWと協力して研究している。

 私事ではあるが、以前関西で、チェルノブイリの原発に関する集会に参加したとき、講師をしていたのが振津かつみさんだった。彼女とは何と中学時代の同級生で、30数年ぶりの再会になった。

 東アジアの安全保障の分科会では、日本からJPPNW(核戦争防止国際医師会議)の片岡勝子先生が「広島、長崎の原爆の被害とその後の影響」、鎌田七男先生が「核攻撃を広島が受けた場合の被害予測」、柳田実郎先生が「戦後の日本の現状」をそれぞれ報告した。

 次回は2年後、スイスで開催される予定。確実に若い世代の参加も定着している。兵庫からも、女性の先生、医学生、研修生の参加が望まれる。

 最後に、昨年京都での反核医師医学者ののつどいで、平和ミーュジアムを見学していたときボランティアで説明してくれた立命館大学の学生さんに教わったことを披露したい。戦争の反対とは、平和。私も学校でそう教わった。しかし、「戦争のない状態=平和」ではない。日本も戦後60数年戦争がない国だ。だが、平和な国と言えるだろうか? 貧困、格差、差別、いじめなど、まだまだ平和にはほど遠いように思える。「平和な社会」をめざす医療人として、これらの問題の解決も視野におき、これからもがんばりたいものである。

 派遣募金にご協力いただいた先生方に感謝する。